旅散人のブログ

旅と写真好きのシニアのプログです。お金の話も得意です。

<雑感>葉室麟の墨龍賦を読んでみて

皆様、こんにちは!

 今日は、葉室麟の「墨龍賦」という本を先日読み終え、面白かったので、感想をしたためます。

★「墨龍賦」との出会い

 この本を見つけたのは、京都駅の新幹線構内にある本屋さんです。葉室麟の作品だったので、ちらっと見ました。題目からは直感的にどんな本かわかりませんでした。序を見ると「京都に住む絵師、小谷忠左衛門に幸運が訪れたのは、寛永九年1月に大御所徳川秀忠が没して間もなくのことである。」から始まり、春日局に召し出された忠左衛門が「そなたが海北友松様の息子殿か」と尋ねられます。そして、一介の絵師であった父が明智光秀重臣であった斎藤内蔵助利三の友であったことを知り、春日局が「そなたは、友松様のことを何も知らぬな。ならば、私が教えてやろう」と静かに語り始めた。ところから、物語は始まります。

★海北友松って?

 海北友松という絵師のことはよく知りませんでしたが、葉室麟の作品です、帯からもきっと面白いだろうと思い、思わずレジへ行きました。後でみると、海北友松は、あの狩野永徳長谷川等伯を輩出した桃山時代にあって、孤高の画家だったそうで、60歳を過ぎてから活躍したらしいです。

 有名な作品は、建仁寺の大方丈の礼の間を飾る「雲龍図」やアメリカのネルソン・アトキンズ美術館所有という「月下渓流図屏風」らしいです。

★作品の面白さ

 海北友松は、小谷城浅井家の家臣、海北家の三男坊で、小さい頃、東福寺の喝食(小童)として育ったらしいです。浅井長政織田信長に滅ぼされた時に海北家はつぶれています。この友松が、武士に戻りたくとも戻れず、激しい世の転換の中でもがきながら、生きる上での美しさとは何かを考え続けた男として、葉室麟が見事に描きあげています。帯には「その絵師は、『武人の魂』を持ち続けていた」とあります。

 解説には、「心構えの美しさ」を主題とした作品とありますが、私にとっては、むしろ戦国時代の歴史小説としての面白さがありました。

 話しに出てくる武将も、比較的マイナーな人々が出てきます。明智光秀斎藤利三との交流、東福寺で同僚だった安国寺恵瓊との執拗なまでの付き合い、同じく尼子家として還俗した尼子勝久やその部下の山中鹿之助との友情、弟子となった宮本武蔵への教え、狩野永徳とのやり取りなど、葉室麟らしい面白さがあります。処刑された斎藤利三の首を奪還した話も出てきます。歴史小説としての面白さも十分堪能できます。

葉室麟

 葉室麟の小説は、これまで、織田信長の二女で蒲生氏郷に嫁いだ「冬姫」や、九州の戦国大名で秀吉の朝鮮出兵でも活躍した立花宗茂を描いた「無双の花」なども読みました。本作を上梓した10か月後に急逝されたそうですが、また本屋で見つけたら読んでみたいと思います。

★最後に

 建仁寺の「雲龍図」も見てみたいです。その子の海北友雪の作品も妙心寺などにあるらしいので、機会があれば見たいものです(既に見たかもしれません)。日本の絵にも少し興味が湧いてきました。

 今日はここまでです。